子どもと物をつなぐという役割
前回、子どもの自立を邪魔しないという発想の元
「子どもに合うサイズの物を準備する」
という大人の陰の役割について書きました。
今回は、その物の使い方を示す、目的の動作を見せるなどの
子どもと物の橋渡しという、もうひとつの大人の役割について。
ポイントは3つです。
①動作を分析する
②ゆっくり見せる
③言葉と動作は分ける
ここでは身近な例として
「脱いだときに裏返しになったズボンを表にする」動きで説明します。
①動作を分析する
「裏返しのズボンを表にする」という一連の流れを
ひとつひとつの動きに分けてみます。
イメージは、折り紙の本。
・裏返しになったズボンを広げ、形を整える
・ウエスト部を片方の手でつかむ
・もう片方の手(利き手)をウエスト部から入れる
・片方の足に腕を通す
・裾から手を出す
・出した手で裾をつかむ
・つかんだまま腕を引いてウエスト部から片方の足の部分を引き出す
(もう片方も同様に繰り返す)
ズボンを表に返す、という大人には簡単なことの中にも、これだけの動作が含まれています。
このたくさんの動作を、流れでパパッとやられると、幼児期の子どもは何がどうなったのか、目で見て分からないんです。
なのでひとつずつ動きを止めて、分析的に見せるということが必要になります。
日常生活の動きというのは、たくさんの動作の組み合わせなんだな~ということが、動きを分析するとよく分かります。
②ゆっくり見せる
①の動きをひとつずつ、ゆっくり見せます。
どのくらいゆっくりかというと、
大人の動きは、幼児期の子どもの6~8倍速とも言われています。
というのを参考に、あとは目の前の子どもが「このくらいの速度なら分かるかな」というのをその時の判断でという感じです。
また、慣れてくると全部をゆっくり見せる必要はない、というのが分かってきます。
例えばズボンの例なら、「手を裾から出して、裾を握ったまま引く」ところがポイントかなと思うので、そこを特に強調して見せると効果的です。
このあたりは実際にお子さんとやってみると、子どもにとってどこがむずかしいのか、どのくらいの速さで見せれば分かるのか、が大人の方も感覚で分かってきます。
③言葉と動作は分ける
「ここをこうして…あーそうじゃなくて!」
といろいろ口出ししたくなるのが大人ですが
幼児期の子どもの脳は、見ることと聞くことを同時に処理するのはまだむずかしいのです。
そして指示を聞くよりも、目で見て理解する方が簡単です。
これは大人もそうで、例えば外国の方から外国語で説明を受けるとき、ジェスチャーがある方が分かりやすいですよね。
子どもの場合は、動きを見せるときはしゃべらないのが、親切で分かりやすい伝え方です。
あとは、
子どもが奮闘している間は極力見守る、
「できない!」と助けを求めてきたらお手伝いする、
できるようになるまで同じことを繰り返し伝える、
子どもがした結果をあからさまに否定しない、
失敗したなと思っても子どもが自分でカバーできる環境も整えておく
(「まちがいも自分で直したい 幼児期」 参照)
というところに気をつけて、
子どもの自立を邪魔しないよう、お手伝いができるといいなと思います。
ズボンは生活の中のほんの一例で、
例えばこの時期なら上着ひとつとっても、
上着を脱ぐ、袖が裏返しになったらなおす、ファスナーをしめる、ボタンをかける、ハンガーにかける、
ハンガーから上着をとる、ファスナーをあける、ボタンを外す、上着を着る
なとさまざまな動きがあり、それぞれの中にさらにたくさんの動きが含まれています。
子どもが歩き出してからをよく見ていると、
この中の何かひとつはやりたがっています。
それを見逃さずに、
上のポイントを意識してやり方を伝えること。
プラス前回書いた、子どもサイズの環境を整える。
(子ども用のハンガーを用意、かける位置を低くするなど)
この2つセットで
大人の介入は最低限での、子どもの自立を邪魔しないお手伝いができます。
大人の介入が最低限なので、慣れてくると大人の方も楽ですよ~
という大人側のメリットも併せて伝えておきます。笑