モンテッソーリアン、里親になる。

10年モンテッソーリ教師をやってみて向いてないことが分かった(笑)ポンコツモンテッソーリアンの里親活動奮闘記録。

Q. 4歳年少さん 描く(書く)ことが苦手です

【ご相談】

息子は、描くこと(書くこと)に苦手意識があります。
どう手助けしてあげれば良いか悩んでいます。

3歳くらいまであまりお絵かき(殴り書き)など
する機会がなかったこともあります。


保育園はモンテッソーリの理論を
一部取り入れている
非認知能力形成に力を入れた園で
赤ちゃんの頃から指先を動かす遊び、
体を動かす遊びとバランスよく、
しかも一人一人好きな遊びをさせてくれています。

指を動かす創作(ラQ、レゴ、おはじき通し)や
自由なペイントは好きで、
料理などのお手伝いにも意欲的です。


絵本は好きで
ひらがな、アルファベット大文字は読めます。

ただ、描くことに興味がなく、
書こうとは積極的にしません。
運筆、迷路などの単純なワークもあまり好きではありません。

周りのお友達がお絵かきに興味を持ったり、
ひらがなを書くことをはじめたりする中で、
親としてまだかまだかと、
ジリジリと待っている状態です。


描けないものを急に描けと言われても
子どもは困るでしょうし、
発達には段階があると理解していますので、
お絵かき以前の 自由な殴り書きまで戻って
そこをたくさん楽しませてあげれば良いのかなと思ったり。

お絵かきの延長に、文字を書くという段階が来るとも本で読みました。

「お絵かきしよう?」と誘えば
「ママ描いて」と言われます。
本人はいわゆる頭足人を描くのですが、
あまり楽しそうではありません。

性格的には慎重でプライドが高く、
できないこと、苦手なことはしたがらないタイプです。
お絵かきに自信がないのは自覚しているようなので、
なんとかサポートしてあげたいです。

描く、書くの敏感期をどのように待てば良いのか、
もしよければ、アドバイス頂ければ幸いです。



【回答】

書きたい!!!
描くの楽しい!!!
と子ども本人が思えるような環境
が必要です。


そんなことは
ご相談者様もよくよく分かっていらっしゃるとは思うのですが、
そしてその具体的な方法を求めていらっしゃるのだと思うのですが、
その前に、

とても心苦しいのですが
この「やりたい!楽しい!」環境を作るうえで
邪魔になっているもの、
どうしても取り除かなければいけないもの
があることを
お伝えしなくてはいけません。


それが、
大人の「書いてほしい/描いてほしい」という気持ち


>周りのお友達がお絵かきに興味を持ったり、
>ひらがなを書くことをはじめたりする中で、
>親としてまだかまだかと、
>ジリジリと待っている状態です。


ご相談者様のお気持ちもよくわかります。
他の子は楽しそうにやっているのに、
うちの子はどうして…?
と焦る気持ちになってしまうのだとお察しします。


ただ、鶏が先か卵が先か的な話になってしまうのですが

大人の
「こうしてほしい/こうなったらいいのに」
という思いが、
子どもに無意識のうちに伝わって
そのプレッシャーによって
子どもがさらに苦手意識を持ってしまうことは
充分に考えられます。


そして、大人の方も
子どものできないことに目が向いてしまうと、
今していることやできていることへの満足感、
あなたが楽しそうで私も楽しい、嬉しいという
共感の気持ちが薄れてしまうので
結果的に、今のお子さんそのものを否定してしまうことにも繋がりかねません。



例えば、あまり料理が得意でないと
自分でも感じているお嫁さんに対して
お姑さんが

「○○さん(兄弟のお嫁さん)は料理が上手ねぇ。
(それに比べてあなたは…いつ上手になるの?)」

という態度だったら、もう、すごく嫌ですよね。笑


口には出さずとも
人と比べられているのが分かり、
ネガティブな評価を感じたら
料理という活動はおろか、
その人のこと自体も、好きになるのが難しくなります。


「私が好き(得意)なのは
 料理じゃなくてお掃除なんだから
 そっちもちゃんと見て、評価してよ!」

という気持ちになるかもしれません。


これは子どもでも大人でも同じだと思います。



実際のところ、
ご相談者様のお子さんは
自由なペイントや指を動かすことは好き
とのことなので
私が最初にご相談の内容を読んだとき
さほど心配にならなかったというのが正直なところです。


この子の書く敏感期は、これからなんだろうなぁ
とも感じました。


ただし、
周りからの先回りの期待感がないという前提があっての話だな
とも感じました。


むしろ今は、今楽しいことを、とことん楽しめばいいのです。

(個人的には、お子さんにとってとてもいい園だと感じました!)


今をとことん楽しむことができていれば、
その子の「旬」が来たとき

書かれている文字に興味を持ち
書こうとするようになる、と思えます。


ですので、殴り書きに戻る必要もありません。
むしろお子さんの態度にも現れているように、
退屈だと思います。
楽しいことの延長に、「できた!」という結果があります。



私がモンテッソーリを好きな理由の一つは
他人と競争する必要がないということです。


他人と比べることに価値を置いていない、
今、そのときをどれだけ一生懸命生きているか
その結果、過去の自分と比べてどれだけ成長したか

に注力できる教育なので
私は安心して、身をゆだねられるのだと思います。


まずは大人の側が
「こうしてほしい」「こうなったらいいのに」
「まだやらないのかな、他の子はやってるのに」
という、他人と比べることによる焦りの気持ちや
ネガティブな評価の感情を取り除いて
(取り除くのが難しい場合は、とりあえず横に置いておいて)


「この子は、いつか書きたい気持ちになる」
「書きたい!ってなったら、とことんやる子だから大丈夫」

ということを、強く信じて
かつ、

「でも、その時期は子どもにしか分からないから
 大人はそれを、楽しみに待とう」

的なゆる~い感じで、ひそかに楽しみに待てるようになると
ジリジリとした焦燥感や悲壮感が減るので、
お子さんの苦手意識が少し和らぐかもしれません。



その上で
子どもが、今持っている(かもしれない)苦手意識よりも
「やってみたい」という気持ちの方が強くなるような環境

考えていきましょう。


①周りの人が書く/描くことを楽しんでいる環境


以前参加した「安田式体操遊び」の考え方が
モンテッソーリとよく似ていました。
その安田式から文言を拝借しますと、

「楽しければ熱中し、(結果)上達する」

のは子どもも大人も共通です。


そして、「楽しい」は、伝染します。


周りで楽しそうにやっていることは
最初は興味なさそうに見えても
いつしか影響されて「やってみたい!」となるものです。


息子さんは慎重派ということなので、
様子見の期間が長いパターンかもしれません。
今がまさにその時期なのだと思います。


この様子見の時期に
周りから急かされさえしなければ

「○○ちゃん楽しそうなことしてるな〜
 僕も書いて(描いて)みたい」

という気持ちが自然に湧き出てくると思います。


なぜなら
6歳までの子ども特有の
吸収する働きはまだ続いている
からです。


お子さんが今いる環境は
「楽しい!」を吸収させてくれる、いい環境だといえます。


周りでお友達が楽しそうにやっているということが
吸収する時期の子どもにとって
大人よりも影響の大きい環境となります。

そこはお友達に任せて、
大人は、子どもの吸収する働きを信じて
素知らぬ顔をしていましょう(笑)


そして時期がきて
最初の文字が書けたときに
一緒に喜んであげてほしい
なと思います。
(大げさに褒める感じではなく、シンプルに嬉しい気持ちを伝えて下さい)



②書いて伝えるコミュニケーションを楽しむ


「書く」ことの大きな目的は
自分の気持ちや状況を文字で相手(周り)に伝える
ことです。

この「書いたことが伝わって嬉しい」
というコミュニケーションの楽しさに気づくと
子どもはどんどん字を書きたくなります。


その時期の子どもたちは
お手紙のやり取りをよくします。



「○○ちゃんへ」
「すき」
「またあそぼうね」
「あそびにきてね」
「××より」


のような簡単なものですが
それがとても楽しく、嬉しいようです。


ご相談者様のお子さんは
拾い読みが「書く」より先に来ているようなので
お友達や先生、ご家族の方など
親しい人からお手紙をもらえると
もしかしたらそれがきっかけになるかもしれません。

もしくは、こちらから
親しい人にお手紙を出す様子を見ることも
書きたい気持ちを引き出すひとつのきっかけになりえます。


で、ここで提案するのが
おじいちゃんおばあちゃんにお手紙を書くことです。
(ちょうど敬老の日もありますし!)


といっても、
書く/描くことを強要する形ではなく
親御さんと共同作業で完成させればよいと思います。


例えば、自由なペイントが好きなら
それを絵葉書にしてもらって
そこに親御さんが

「おじいちゃんおばあちゃんになんて書こうか。
『いつもありがとう?』
 それとも、『だいすき』がいいかな。」

とお子さんに聞いて、文字を書き込めば
共作の絵手紙の完成です。

オクラやれんこんなどで
野菜スタンプを楽しむのもいいと思います。


それを一緒にポストに投函しに行きましょう。


できれば、受け取ったおじいちゃんおばあちゃんの
喜ぶ様子までお子さんに伝えられるといいですね。


実はこれ、
前の職場(あかね子どものいえ)で
毎年恒例でやっていたことなのですが
(野菜スタンプの絵手紙は年少さんで毎年やっていましたw)


今振り返ると、
字を書きたい!と自然に思わせるきっかけの一つになっていた
のかもしれないなぁと思うのです。


あくまでも目的は
おじいちゃんおばあちゃんにお手紙を出すこと、
として、楽しんでやってみてもらえれば、

お子さんも変なプレッシャーを感じずに
おじいちゃんおばあちゃんとの
お手紙の交流を楽しめると思います。


③描く活動のバリエーション


料理のお手伝いも大好きということなので
そこから派生して
(手間はかかりますが)

・玉ねぎの皮や黒豆の煮汁で染め物をしたり
(身近なものから出る色を楽しむ)
・その煮汁を絵の具のようにして自由なペイントをしたり
(+描くことを楽しむ)
・リンゴやレモンの果汁であぶり出しをしたり
(+マジックのような化学変化を楽しむ)


お料理は全く関係なくなりますが(笑)
Tシャツや布地にペイントをしたり


画用紙にクレヨンの一辺倒ではなく、
描く楽しみを
大人も子どもも一緒に見いだせる活動があると
お子さんの描く活動もまた一段階進むかもしれません。


提供する大人の側もワクワクするような
描く活動は
そのワクワクが子どもにも伝わると思うのです。


[まとめ]

子どもの吸収する働き、敏感期の力を信じる
・その時期は子どもに任せて待つ

・今お子さんのいる環境は「書く/描くって楽しい!」を伝染させてくれるいい環境

・大人が先回りの期待感でプレッシャーを与えない


これをふまえた上で

・絵手紙など「書いて伝える交流」を楽しむ
・布地ペイント、あぶり出しなど大人もワクワクする「描く」を紹介する


以上です!
何かありましたら、またコメント欄からお知らせください。

どうぞ、今しかない子どもの「今」を
大人も一緒に楽しめますように。