モンテッソーリアン、里親になる。

10年モンテッソーリ教師をやってみて向いてないことが分かった(笑)ポンコツモンテッソーリアンの里親活動奮闘記録。

これだけは伝えたい2つのこと①自分を大切にする 0歳児 

生まれて最初の1年間で、
基本的信頼感が育つことが大事です。

という話を育休の記事でしましたが、
本当にこれ、大切なことなのに、
意外と知られていないし、分かってもらいにくいなという感覚があります。

先日も、「赤ちゃんが泣いたときにどう対応するか」という話に、実際に泣いている3ヶ月の赤ちゃんの前でなったときに
ひとりのお母さんが、
「泣くのも運動だから、しばらく放っておいたら」的なことを笑顔で言っていて


待てーい!!!(アンジャッシュ児嶋風)


と叫びました、心の中で。


あかねの園長先生から紹介していただいた、
佐々木正美先生著「子どもへのまなざし」に
これと対極の、大切なことがたくさん書いてあります。
その一部を抜粋させて頂きますと;


「豊かな生涯を送るために、
人生のスタートでもっとも大切に育てなければならないことは、
人を信頼することなのです」

「どうしたら人を信頼できるようになるか(中略)
それは赤ちゃんの側からみますと、
自分の望んだことを、望んだとおりに十分にしてもらうこと」

「乳児は自分の要求をなにひとつ、
自分でかなえることはできないのです。(中略)
乳児が自分でできる努力というのは、
泣くことだけだということ」

「泣くことで自分の希望を伝え(中略)
その伝えた希望が望んだとおりに、
かなえられればかなえられるほど相手を信じるし、
その相手の人をとおして多くの人を信じるし、
それになにより自分自身を信じるし、
自分が住んでいる環境、地球、世界を信じることができるのです」


佐々木先生は児童精神科のお医者さんで
療育センターで多くのお子さん、親御さんの相談を受けていらした方です。
先生はアメリカの臨床家、エリクソンの発達論を元に
「人間が精神的に健全に生きていくために
 特に社会的な存在として安定した生き方をするためには、
 乳児期から老年期まで、
 どういうことに気をつけて、
 どのような課題をしっかりと消化していくべきか」
を、現代の日本の子どもたちに照らし合わせて
この本のなかでもとても分かりやすく伝えて下さっています。

エリクソンモンテッソーリと同年代に生きた人で
二人の間には親交があったと言われていて、
共通するところが多くあります。

モンテッソーリエリクソン、佐々木先生とも
「乳児期の発達課題は、基本的信頼感が育つこと」
と明確におっしゃっています。
時代も場所も越えた、人間の発達の共通項のひとつです。


この章の中で佐々木先生は、興味深い実験とその結果を紹介しています。以下抜粋↓


乳児院で、深夜の授乳について、赤ちゃんを2つのグループに分けて実験をしました。

①泣いてもなにしても深夜には授乳せず
 昼間も規則正しく定時授乳するグループ

②子どもが望む度に授乳するグループ


①のグループの赤ちゃんは、3日~1週間前後で、翌日まで泣かないで授乳を待てる子になりました。

一見、忍耐強く、周りの現実が認識できる賢い子に育ったように見えます。

が、その後の何年にも及ぶ追跡調査の結果、

①のグループの子どもは
忍耐強くなったのではなく、
むしろ困難なことを早くギブアップする子に育ちました。
ちょっとした困難をすぐ回避しようとする、
困難を克服するための努力を、すぐ放棄する子どもに成長していったのです。

そしてもっと大切なことが分かりました。

3日にしろ、1週間にしろ、それ以上にしろ、泣いてもだめだとあきらめるしかなかったという体験が

子どもの心に、
周囲の人や世界に対する根深い不信感と、
自分に対する無力感のような感情
をもたらしてしまうことが分かりました。

それに対して、②のグループの
泣くことで自分の要求を表現すれば、
その要求が周囲の人によって満たされる体験を重ねた子どもは

自分をとりまく周囲の人や世界に対する信頼と、
自分に対する基本的な自信の感情が育まれてくる

ということが分かりました。


育休のところでも書きましたが、
生まれたばかりの赤ちゃんは不安ベースにあります。
その不安を安心に変えてくれるのが
自分が泣いて要求を伝えたときに、周りの人が「オムツかな、お腹すいたかな、あれかな、これかな」と対応してくれること。

赤ちゃんが泣いたときに意識的に放っておくのは、
ちょっと厳しい言い方をすれば、

「あなたが泣いても誰も助けてくれないのよ
 あなたはその程度の存在なのよ」

という無意識のメッセージを送ることと同じです。

だから、大人が意識的に放っておこうとするのは
間違いなのです。

今、「意識的に」と書いたのは
そういうつもりじゃなくても、赤ちゃんの要求に100%応えるのは、おそらく無理だからです。

意識しなくても、なるべく応えようと努力しても
応えられない部分がどうしてもでてくる、
これは意識的に放っておくこととは本質的に違います。
だから、赤ちゃんに伝わるメッセージも違います。

「あぁ~また赤ちゃんの要求に、
すぐに応えてあげられなかった…ダメな親だ」
と落ち込んだり悲しんだりしなくていいんです。

「またずっと泣かせてしまった…」
ではないんですね。
赤ちゃんが泣くのは周りの人を信頼してのことですから。

「お待たせしてごめんね、でも私はあなたのことが大切なのよ」
がちゃんと伝わります。

だけど、「泣くのも運動だから」と
あえて放っておくのは違うよ、ということです。


子どもの要求に何でも応える

と書くと、
「またそんな過保護な…」
という声が必ず聞こえてきます。
でも佐々木先生もおっしゃっていますが

乳児期の育児には、過保護ということはない

です。

100%応えられないのが現実なのですから。
過ぎることはないですよね。

大人自身の寝不足、疲れの中で、それでも
できるだけ対応してあげたい、という姿勢に
過ぎることはないと思います。

そしてもうひとつ。
子どもの要求に何でも応えるのは
「乳児期」の期間限定です。
ずっとではないということです。
安心してください、ずっとではないですよ!

具体的には、最初の1年が目安ですが
このスタートの1年で要求をかなえられるほど
「基本的信頼感」が育ちます。

基本的信頼感がしっかり育っていれば
およそ2年目から始まるしつけ、「これはしてはいけないよ」「こうするんだよ」という大人側の要求を繰り返し伝えて待つこと、も
少し厳しくしても大丈夫です。


赤ちゃんのときに抱っこしすぎると抱きグセがつく

というのも、お母さんたちの間で神話のように語り継がれていますが、正確には

そうやって抱くのをためらった結果、
子どもの中の基本的信頼感がしっかり育たず、
何年たっても基本的信頼を求めて抱っこをせがむ

ということだと思います。

だって人間にはみんな、
自立しようとする欲求がもともと備わっていますからね。
24時間365日、ずっと抱っこされていたい子どもはいないのです。

でも自立していくために、最初の基本的信頼感がどうしても必要だということです。

子どもの発達は、ひとつが育ったらその上に次のもの、というようにピラミッド型に育っていきます。

基本的信頼感という土台がしっかり育ったら、
その上に自立心や社会性が乗ってきます。
土台がぐらついていると、次のものが乗せられませんし、うまく育ちません。

大きくなって、例えば思春期に問題行動をとる子どもは、基本的信頼感が育っていないからということで、赤ちゃんの育ちからやり直さなければならないことが多いそうですが、それがどんなに難しいことかは素人の私でも想像できます。


豊かな生涯を送るために、
人生のスタートでもっとも大切なことは、
基本的信頼感が育つこと。


大人が子どもに伝えたい2つのことのひとつ、
「自分を大切にする」
ために必要なことを今回は書きました。

次回はもうひとつの
「周りの人や環境を大切にすること」
について必要なことを書いていきます。