モンテッソーリアン、里親になる。

10年モンテッソーリ教師をやってみて向いてないことが分かった(笑)ポンコツモンテッソーリアンの里親活動奮闘記録。

Q. 兄妹げんか どう対応すればいいですか? ①大人の介入のしかた

【ご相談】

兄妹との関わりについて質問させて頂きます。

息子(4歳10カ月)と娘(2歳1カ月)の2人の子どもがいます。

娘のことばがよく出るようになってから、
今までよりも2人で一緒に遊ぶことが増えてきました。
そんな時にだいたい、物の取り合いでケンカになります。

私が間に入って、2人の気持ちを代弁したりするのですが
それでいいのでしょうか?

「自分の気持ちは自分で言おうね」
と促しているのですが、
息子が話しても、娘にギャーっと泣かれると
息子は話をしたくなくなるそうで。。。

そして息子はすぐに
「ママー!〇〇ちゃんが!」
と私に言いにきます。

ママにどうして欲しいのかと聞くと
「〇〇ちゃんが悪いから怒ってほしい」と。

過去の記事で、大人に伝えにきている時は、
【子どもの思考が停止した状態】
だということを読みました。

できればうまくいかなかったとしても、
子ども同士で話してみてほしいのですが、
親の私としては、どのように関わったらいいのでしょうか?
正直なところ、やりとりに疲れてしまっています(苦笑)



【回答】

3歳以下の子どもが含まれたケンカの場合、
大人の介入がある程度は必要になります。
ですが、「そもそもケンカしなくていい環境」を作れると
大人の負担が減るのも事実です。


今回は、3歳以下の子どもがいる場合に
なぜ大人の介入が必要なのか
どのように介入するのが望ましいのか
子どもの発達とともに、お伝えします。
(環境の話は次回お伝えします)


ご相談の文章の中で触れられていた、

「子どもが大人に言いに来るのは
 子ども自身が思考停止しており、
 ジャッジを大人にしてほしい
(そして自分に有利なジャッジをしてほしい)
 という気持ちの表れ」

ということを書いたのがこの記事↓であり
それはそれとして事実なんですが、

montessorilover.hatenadiary.jp



この記事に出てくる、ケンカをしている子ども達は
皆、3歳以上です。

その場合、子どもたち自身で話し合って決めることが可能であり
子どもたちに求められることでもあります。


ただし、最初から
「あなたたちで決めてね」
と突き放すというよりは
(記事の中では若干そういう言い方もしてますがw)


もっと幼い頃、1~2歳の頃から
大人が子どもの気持ちや要求を代弁して
通訳のように伝えることを繰り返す、その積み重ねの上で
3歳過ぎて、子どもが自分の気持ちや要求を言葉で伝えられるよう
導く、というイメージです。



そしてここが今回のポイントなのですが、

3歳以下の子どもが関わっている場合は
どうしても大人の仲介が必要になってきます。


なぜなら、3歳頃までは
【自己中心的なのが当たり前の時期】
だから。


この時期の発達を理解するには
運動と脳の発達を知る必要があります。


まず、1歳半頃、
歩いてどこにでも行けるようになった子どもは、

「自分が、お母さんや周りの人とは異なる存在である」

ことに気づきます。

運動の発達と心理的発達の関係で、
物理的に大人から離れられるようになることで
心理発達にも「自我の芽生え」という影響を及ぼすのです。


ここから

「自分で!」
「イヤ!」←本当にイヤというよりは、「あなたと私の考えは違う」という意志表示としてのイヤ

が増えてきます。
いわゆるイヤイヤ期ですね。


そこに加えて
「(ぜーんぶ)私の!」
という、極めて【自己中心的な】気持ちも表面化してきます。



この自己中心的な時期のことが分かる
「サリーとアンの課題」
という発達テストがあります。


①サリーが持っているボールをカゴに隠して、立ち去ります。(アンはそれを見ています)
②サリーがいない間に、アンがボールをカゴから箱に移し替えます。そしてアンもその場を去ります。
③サリーが戻ってきて、ボールを探すのですが、

サリーはカゴと箱のどちらを先に見るでしょうか?


というクイズに答えることで、発達段階がわかるというテストです。



普通に考えると、
答えは「カゴ」


なんですが、



3歳児にこの質問をすると、
多くの子どもが「箱」と答えます。


同じ質問を4〜5歳児にすると
多くの子どもが「カゴ」と答えます。



このテストの答えが意味するのは、

3歳の時点では

「自分が見て知っていること(アンがボールをカゴから箱に移したこと)は
 他の人もみんな知っている(だからサリーが最初に探すのは、箱)」

という自己中心的な物の見方、考え方にとどまり


4歳過ぎた頃から

「サリーの立場で考えると、
 アンがボールを箱に移したのを
 サリーは見ていない、だから知らない。
 だからサリーが最初にさがすのは、カゴ」

という、他人の立場に立った見方、考え方ができるようになってくる

ということです。


これは脳の発達に関係があります。


前頭葉という部位は
脳の中で一番最後に発達します。
生後4〜5ヶ月から発達し始め、
ゆ〜っくり発達して、10歳頃に完成します。

前頭葉には様々な役割があるのですが
人間を人間たらしめる脳、と言われており

具体的には
・感情のコントロール
・行動抑制
・モラル
・社会性の発達
などにも関わっています。(他にもいろいろあります)


その発達も
経験から学び、脳に刻み込まれていく
というイメージです。


ざっくりまとめると、
3歳頃までは、脳の発達により
自己中心的な観点で物事をとらえており、
経験によって、自己コントロールや社会性が発達していく

ということです。


この自己中心的な3歳以下の子どもたちに
首尾一貫した制限を伝え続けるために
大人が関わる
ことが重要になってきます。


具体的には

「自分/他人/物をわざと傷つけない」
「自分がされてイヤなことは、人にもしない」

という、人と暮らすうえで至ってシンプルなルールを
ケンカやトラブルを通して、伝えていくことが大切
になってきます。


大人は、子どもがふたりいると
年齢が上の子どもに
いろいろ要求しがち ←私自身の反省も込めて

なのですが、

今回のご質問のケースでは、
お話が必要なのは妹さんに対してかもしれません。


なぜなら、妹さんはまさに【自己中心的な時期】真っ最中だから。


現場を見ていないので
あくまでも文章からの推測ですが、

お兄ちゃんの方は、
4歳10ヶ月、もうすぐ5歳という年齢から
友達と一緒に遊ぶ上でのルールを
少しずつ身につけてきていると推測します。


そこに、自己中心的な発達時期の妹さんがきて
お兄ちゃんが使っていたものを取ってしまい、

お兄ちゃんは妹さんに手を出すのではなく
(たまに出すときもあるかもしれませんが)
あくまでも使っていたものを取り返す。

でも妹さんは「ぜんぶ私の!」という捉え方なので
自分のものを取られたと思い、泣く。

妹に泣かれたお兄ちゃんが
困ってお母さんを呼ぶ。

という流れが、なんとなく思い浮かびました。


もちろん、お兄ちゃんの方が
おもちゃを独り占めしたり
ずっと貸してあげなかったり
ということもあるとは思いますが、

発達だけ考えると
理不尽な要求が多いのは
妹さんの方なのではないかな、と思いました。




上のお子さんが
「自分がされていやなことを人にしない」
「自分も人も物も傷つけない」
というルールを守って遊んでいて、

下のお子さんが、上のお子さんと一緒に遊びたいのなら

下のお子さんもそのルールを守る義務があります。

ちょっと厳しめに言えば
ルールが分からないと一緒には遊べない、ということです。
(ここは集団遊びになると、子ども同士の方がシビアです)


人が使っている物は取らない
使いたいときは「貸して」とたずねる
「いいよ」と言われたら使える
そのときまだ使っていたら、終わるまで待つ


などの一定のルールの中で初めて
子どもたちは安心して一緒に遊べるのです。

そのかわり、ルールの範囲内では
思い切り集中・没頭して、満足して終える「自由」があります。



この「一貫した制限」の中の「自由」を
子どもたち一人ひとりに伝えていくのが
大人の役割
です。


「お兄ちゃんが使っているものはとらないんだよ、違うのを使おうね」
「お兄ちゃんが終わったら貸してもらおうね、終わるまで待とうね」


などと、淡々と伝え続けることで
妹さんにルールを伝えるのはもちろんのことですが


このやり取りを聞いているお兄ちゃんの方も
「こういうときは、そういう言い方をすればいいのか」
ということを吸収して、少しずつ自分の言葉にしていきます。


間に入る大人が、子どものロールモデル(お手本)になるイメージです。



3歳以下の子どもは
自分の要求が通らないと、かんしゃくを起こすことがあります。
(妹さんの泣きも、かんしゃくの1つではないかと思います)


それでも、いくら泣いても
必要最低限の制限があるんだよ
その中で人は人と一緒に生きていくんだよ

ということを、繰り返し、根気よく
伝えていく必要があります。


かんしゃくを起こしてしまったら
そのときにどれだけ声をかけても火に油なので
泣き方が弱まってきたところで、
声をかけてみて下さい。


子どもが自分で、怒りの気持ちを落ち着けることができた

という体験も、この時期に必要なことなのです。



とは言え、
毎回毎回、ケンカのたびに大人が介入しなければならないのは
大人にとってもとても疲れることなので

そもそも、ケンカをしなくていい環境づくりを考えてみよう!
というのが次回のお話です。すでに長いのでw
(そっちの方が難しいので時間かかるかもしれません、すみません)