環境を見直してみる 食事編
主に2~4歳くらいのお子さんがいる親御さんから
「うちの子、ご飯食べないんです~」
という悩みをよく聞きます。
食事は1日数回、毎日のことなので
その度に悩んでる親御さん、大変だろうな…悩むまではいかなくても、ストレス感じるだろうな
と思います。
食事に関して、園の生活の中で「こうするといいのか~なるほど!」と感じたことがいくつかあるので、今回は食事の環境について、見直しポイントを書いてみます。
見直しポイント①
最初に盛る量が多すぎませんか?
親御さんが「食べない」とおっしゃる中には、
「こちらが用意した分量を全て食べてくれない」
という意味合いが含まれるのかな、と感じます。
あかねで1,2歳児クラスに初めて入ったときに
私にとってちょっと驚きだったのが
最初の量、少なっっ!
ということ。笑
例えるならまるでオードブル。
大人の親指と人差し指で丸を作ったときくらいの量。
そのオードブルのような白米、主菜、副菜を
子ども用の小さなご飯茶碗やお皿に盛りつけたのが最初の量。スープも子ども用のお椀に半分も入っていません。
そんなちょっとで足りるの!?
と思いました、最初は。
でも、それをぜんぶ食べた子から
好きなものをおかわりできるんです。
このおかわりが次から次へでとめどなく、
あまりによく食べ過ぎるので
「ひとつの種類のおかわりは2回まで」
という決まりがあとからできたくらい、笑
みんなよく食べるんです。
結局トータルで
「え、こんなに食べたの!?
おかわりもうありません!笑」
ってくらい、よく食べます。
大人が驚くくらい子どもが食べるポイントは
【子どもが完食できる量】を最初に盛る、ということです。
子どもにとっても、「ぜんぶ食べた!」ことは嬉しいんです。「ピカピカ!」と教えてくれるその様子からも、その嬉しさが伝わってきます。
その「ぜんぶ食べた」を何度も繰り返すことで、
結果的にトータルでこちらの食べてほしい量を食べています。
こうすることで、子どもがご飯を残す(大人から見たら残される)体験が減り、子どもも大人も気持ちよくいられます。←ここが大切!
さらにこうすることで、
「今、この子はこのくらい食べるんだな」
という適正量が大人にも見えてくるので
お弁当など小分けに出せないものを用意するときにも、その適正量が参考になります。
見直しポイント②
ご飯以外のものでお腹を満たしてませんか?
「お菓子はよく食べるんですけど、ご飯は…」
というお子さんは、
そのお菓子でお腹が満たされてご飯が食べられないのかもしれません。
特に夕方、夕飯前に「おなかすいた~」とぐずるお子さんはとても多いのですが、ご飯を食べなくて心配とおっしゃる親御さんには
・おやつをお菓子→おにぎりやさつまいもに変更
・夕飯はおかずだけ食べたらOKにする
ことを提案していました。
これは1日のトータルで見て「食べてもらいたい量と栄養」を、おやつと夕飯に分けるやり方です。
それを園長先生が提案しているのを聞いたとき
「あぁ、そういう柔軟なやり方でいいんだな」
と安心したのを今でも覚えています。
「ご飯の時間はご飯、おやつの時間はお菓子」
という大人側の固定観念を捨てると、大人も少し気が楽です。
見直しポイント③
子ども自身が食事に集中できる環境ですか?
園では、当たり前かもしれませんが
テレビを見ながらご飯を食べることはありません。
(そもそもテレビがありませんが)
テレビを見ながらご飯を食べ進めるという
2つのことを同時にするのは、
幼児期の子どもには特に、むずかしいことです。
これが分かると、
大人がご飯中にテレビをつけることが
子どもが食事に集中する邪魔をしている
というのも分かってくると思います。
ましてや、テレビにくぎづけで手が止まってる子どもを怒るなんて、大人にとってもこんなもったいないエネルギー消費はないですし、こんなムダな争いはありません。怒ってもムダなんです。どんな子でもテレビに見入ったら手が止まりますから。
テレビを消して、食事に集中できる環境を作ることの方が先です。
見直しポイント④
遊び食べを、大人が無意識に許してませんか?
「食べない」理由でとても多いのが
「途中で遊んでしまうから」。
一口食べてはどっかへふらふら、また戻ってきて食べる、または大人が追いかけて食べさせる。
ちょっと待って!
その食べ(させ)方がすでに、
「遊びながら食べてもいいんだよ」
というメッセージを子どもに送ってしまってます。そんな意図はなくても。
遊んでしまって食べない場合、
大人の対応を変えて「食事をする環境」を作り直す必要があります。
参考程度に、あかねの場合を。
遊んでいる子は1歳半でも2歳でも
「もうご飯おしまいなのかな?」と聞かれます。
遊びながらご飯を食べることはない、
ご飯を食べるときは座っている、
終わったら立っていい
というのが全体の共通の雰囲気としてあって、それを最初から毎日繰り返していると、子どもは小さくてもその雰囲気を当たり前として、途中で席を立ったり遊んだりしなくなります。
たまにその雰囲気が分からず、
もしくは分かっていても、どうしても遊びたくて遊んでしまうお子さんも中にはいます。
そこで大人(先生)がどう対応するか。
まずは「座りましょうね、座って食べましょうね」ということを繰り返し伝えます。
「食べるときはどうするんだっけ?」と子どもに考えさせる声かけをしたりもします。
それでも、何度言っても、まだ遊んでるときは
「遊ぶならご飯はおしまいでいいのかな?」
遊ぶ=ご飯終了
であることを伝えます。
この辺でだいたいの子が(あ、やべぇ)とばかりに戻ってきて座ってまた食べ始める(笑)のですが
もしそれでもまだふらふらと遊んでる場合、
「じゃあ、ご飯はおしまいね」
そして本当におしまいにします。
例え途中であっても、そのあとやっぱり食べると泣いても、です。
スパルタ?
ではありません。
1歳でも2歳でも3歳でも、子どもをひとりの人間として尊重して接すると、こうなります。
人間はご飯を座って食べるんだよ、
食べているときは遊ばないんだよ、
席を立ったらおしまいだよ
というシンプルなことを、怒るわけでなく、ただ淡々と、態度と言葉で伝えるということです。
このへんはなぜか、私も含め日本の親御さんは苦手とするところで、変に情に流されがちです。
だからこそその大人の揺れ動く感情を、吸収する時期の子どもがすばやく感じ取って、結果として遊んじゃうんですけど。
逆に欧米の親御さんはこのあたりほんとにはっきりしていて躊躇なしです。遊ばせながら食べさせるというのは、聞いたことがありません。
で、この一見厳しいやり方の何がいいかというと、
まず、大人がこうだよと言ったことを必ずやる、という姿勢を見せることで
「遊んでたら食べられない」ことを子ども自身が悟ります。1回悟った子どもは次の食事の時から遊ぼうとはしません。
逆に、遊んでても何でもいいから食べて~ と大人が思っている場合には、いつまでも遊びます。
そしてこうすることで、次の食事の時にはぜったいお腹が空いてます。
お腹が空いてたら何でもガツガツ食べるのが、人間の本来の姿です。
食べるときは食べる、遊ばない
というけじめを、子ども自身がつけられるようになります、お腹が空いてたら。
これは私の離乳食時の例ですが
遊び食べはしなかったものの、
好き嫌いが多くてあまり食べず、親を困らせていたそうです。
でもある時、手足口病になってご飯が食べられない日が2日ほど続き、やっと治ってさぁご飯だ!となったときに、よっぽどお腹が空いてたんでしょうね、
嫌いな野菜のピューレに
顔から突っ込んでいったそうです。
せめて手を使え(いやそこじゃないから
そしてそれを見た親は
お腹が空いたら食べるんじゃん!
と思ったとか思わないとか。ごめん母…
とにかく、お腹が空いたから、子どもが自分でガツガツ食べるという環境を作るのが、いちばん効果的なんです。
これも1日のトータルで見て、
さっき途中で終わりにしたから足りなかったかな、じゃあ今回はおかわりたくさんできるように用意しておこう、と調整できますよね。
おそらく、初めてこれをするときはものすごい泣かれるので、(途中で終わりにしてかわいそう…)と心折れそうになる方もきっといらっしゃるかと思いますが、
長い目で見たときに、子どもにとってもっとかわいそうなのは
「人間としてどのように食事するか」
を周りの大人から教えてもらえないことです。
これは食事に限らず、人としてどうするか、ということ全般においてですが。
たぶん、ここまでしなくても
・お腹が空いていて
・完食できる量のご飯がでてきて
・テレビなどの集中を妨げるものがなければ
子どもはおそらく、自分でガツガツ食べ進めると思うんですが
ここまでやっても、どうしても遊んでしまう…
という場合には、一度「遊ぶならおしまい」を試してみてください。
人間としてどう食事するか、
いちばんいいのは、一緒に楽しく食べること。
これに勝る環境はないです、ほんとに。
これをこのくらいは、食べさせなきゃ!
という力を一度抜いて、
でもポイントだけおさえて
1日に数回の毎日の食事を楽しめたらいいなと願います。