モンテッソーリアン、里親になる。

10年モンテッソーリ教師をやってみて向いてないことが分かった(笑)ポンコツモンテッソーリアンの里親活動奮闘記録。

3歳児のときに大切なこと

年代別に大切なこと、ざっくり復習☆

0歳児:
基本的信頼感が育ち、
自分や周りの人、環境を信頼できるように
子どもの要求にできるだけ応えること。

1,2歳児:
人や物を大切にすること。
人や物を傷つけないこと。
を伝えながら、やりたいことができるよう、
環境を整えること。


ときて、今回は3歳児、
年少さんの1年で大切にしたいことを。


あかねでは、年少さんから個人面談がありまして
そのとき皆さんに必ずお伝えしていたことは

「年少さんの今年1年の目標は
『自分で自分のことができるようになる』
 ということです。」

これがこの時期、本当に何よりも大切なことです。


自分のことというのは、
着替えたり、ご飯を食べたり、トイレに行ったり
生活の身の回りのこと。
それらのことが、子ども本人の力で
できるようになるということ。

それは、読み書き算数ができることよりも
断然たいせつなことです。

ということを口酸っぱくお伝えしていたんですが
実は1年目は、園長先生がそうおっしゃるので
(あぁそうなんだな)と思いながらも
その意味するところが、
心の底からは実感できずにいたんです。
(そのときの年少さん、ごめんなさい)

でも幼児組の担任になって2年目の冬、
その大切さをふかーく実感したことがありました。


********


ある年少さんで、入園した当初、
いつもどこか自信がなさげで
おどおどしたような、ビクビクしたような印象の
お子さんがいました。

お友だちの輪になかなか入れず、
こわばったお顔でいつも先生にぴとっとくっついて
先生が手をつないで「入れて」と一緒に声をかけてやっと仲間に入るも、先生が少し離れるともう不安になってしまって、輪を抜けてまた先生にくっつき…という感じでした。

着替えもその入園時点ではまだひとりではできず、
どうやって袖から腕を抜くのか、
頭はどこから出すのか、
ズボンはどこから足を入れてどこから出すのか、
脱いだ服はどうたたんでしまうのか
ひとつずつ、丁寧に伝えながら
毎日毎日奮闘していました。


そんな日々を重ねて、9ヶ月ほどたった、3学期。

気づいたら、
その子の着替えがスムーズになっていました。
服を脱いで、脱いだ服をたたんで袋に入れて
新しい服を着る
この一連の流れが、ほぼ自分でできるようになっていたんです。

そのあたりから、その子のおどおどビクビクした感じがなくなってきました。
むしろちょっと堂々とした印象に。

お友だちの輪にも、「いれて!」と自ら入れるようになってきました。
笑顔も増えてきました。


あれ、なんだかずいぶん、変わったな

と感じていたある日、着替えをするその子(と何人か)のそばに座っていたら、その子が唐突にこう言ったんです。

「先生、大丈夫だよ!
 僕もうひとりでできるから」


あまりの唐突さに面喰らいましたが、
その後少し経ってから

(え…何今何て言った?
 「ひとりでできるから大丈夫」
 って言ったよね?)

……


えええええーーーーーーーーーー


あんなにおどおどビクビクしていたあの子が!
自信に満ち溢れたお顔で!!
「ひとりでできるから大丈夫」と!!!


お ど ろ い た!!!!


このことを興奮気味に園長先生や他の先生方にお伝えして、みんなで話している中で

「やっぱり、自分で自分のことができるって
 すごく大切なことなんだね」

という結論に改めて達したのです。


********


「自分で自分のことができる」ことは
子どもにとって、これ以上の喜びはないというほど
嬉しいものです。

本来、子どもは
「自分で自分のことがしたい!」
という自立への欲求を持っているからです。

着替えひとつとっても

・まだ小さいから
・自分ではできないから
・忙しいから
・時間がないから

と、大人が代わりに脱がせたり着せたりしていると
この自分で!という気持ちはいつまでも満たされず
からだの動かしかた、服のたたみかたは
いつまでも分からないまま、できないままです。
結果として自立心や自信も育ってきません。

逆に、自分で着替えられるようになると
自立したい欲求がひとつ満たされて、
静かな自信がわいてきます。


おどおどビクビク→「いれて!」の変化は
この心の変化が、
着替え以外の場面で表れたものです。

自分のからだを思い通りに動かして
自分のことができるようになったことが
お友だちへのアプローチ、「社会性」の部分にまで
変化をもたらしたのです。
大人からみたら全く関係なさそうなのに。


さらにその後、
その子はもうひとつの変化を見せてくれました。

自分ができることを、
今度は他の人にもしてあげたり
教えてあげたりするようになったのです。

例えば蝶結びができるようになったら、
お友だちのエプロンを背中で結ぶことを
喜んでしていました。

できなかったことが、
毎日一生懸命練習してできるようになった
という体験の中にある大きな喜びが
今度は人の役に立つ喜びにつながったんですね。

そしてこの手伝いかたが絶妙で、全部やってあげちゃうのではなくて
ほんとにできないところだけを、さりげなくやってあげて、あとは本人に任せる
という感じなのです。

それは、
最初は自分でできなくて自信がなかったこと、
根気よく教わって練習し続けたこと、
できるようになって嬉しかったこと
を知っているから
他の人にもこの「自分でできるようになる喜び」を味わってもらいたい
という心の表れにも見えます。


自分のことがしたい!自立の欲求が
→練習してできるようになったことで満たされ
→その間に自立心や自信が育ち
→社会性や思いやり、助け合いまで発展する


このような流れで子どもが育っていくことを、
園長先生や先輩の先生方は
これまでの経験で分かっていらしたのだと思います。


だから
「子どもが自分で
 自分のことができるようになることが
 何よりも大事ですよ」
と何度も繰り返しおっしゃっていたのだと
そのときやっと分かりました。

そして運動会やクリスマス会などの行事で忙しいときでも、
子どもの着替えや食事、トイレなどの生活の場面で
根気よく丁寧に寄り添い、
やり方をゆっくり見せたり
できないところだけ少し手伝ったり
していたのは、こういうことか!
と心の底から納得しました。


モンテッソーリというと、
お仕事と呼ばれる活動時間内の
小さな子の手先の活動や、
幼児さんの言葉や数の活動に
大人はどうしても憧れの目を向けがちですが

本当の意味で、子どもが
「よりよい自分を育てるおしごと」
ができるのは
実は着替えや食事やトイレなどの
日常生活の練習の中なんじゃないかな~
と思うのです。

そしてそのピークが
年少さんだということです。